【なぜ45YSは3cm段差?】マス形状による流下性能の違い2024.10.15

適切なマス形状を選択していますか?

排水マスは、住宅や施設からの排水を効果的に処理場または浄化槽へと導くための下水道の一部です。
この部分の設計や選択が適切でないと、排水の逆流や詰まりが発生しやすくなり、結果として臭いの発生や衛生的な問題を引き起こすことになります。
逆流を防ぎ、排水のスムーズな流れを保証するためには、用途に合った適切な排水マスを選ぶことが非常に重要です。

施設に最適なマスの設置イメージ

トイレ排水には段差付き45度合流(45YS)が推奨されています

塩化ビニル管・継手協会によると、トイレ合流部におけるマス形状の選定について下記のように明記されております。

排水管径100の場合は汚水の逆流を防止するため、45度合流段差付(45YS)または平行合流段差付(HYS)の使用を基本とします。
施工上やむを得ない場合及び排水管径125・150の場合は、45度合流(45Y)または平行合流(HY)を使用します。

引用元:「施工の手引き(塩化ビニル管・継手協会)」

90度合流(90Y)は設置は容易ですが、合流部分で水の流れが急激に変わり、約3mほど上流側に逆流します。また45度合流(45Y)は90Yに比べると角度の変化が緩やかですが、約1.5mほどの逆流が発生します。
汚物を含まない雑排水では特に問題はありませんが、トイレ排水は汚物やトイレットペーパーなどの固形物が含まれるため、上流側にこれらが取り残されると詰まりの原因になります。
これに対し、トイレ排水に推奨されている45度合流段差付(45YS)や平行合流段差付き(HYS)は、緩やかな角度で合流しつつ3cmの段差を設けることで逆流を防いでいます。

次の項目では90Y、45Y、45YSそれぞれの排水マスを用いて、トイレからの排水が管路内をどのように流れるのか確認します。

排水の流れの確認:悪い例
排水の流れの確認:悪い例
排水の流れの確認:良い例

流水実験

透明な塩ビ管と排水マスを用意し、それぞれのマス形状で水がどのように流れるのか実験してみました。

なぜ45YSのマスの段差は「3cm」なのか?

流水実験の通り、90Yでは約3mほど、45Yでは約1.5mほど上流側に逆流が発生しました。
それに対し、3cm段差が付いた45YSでは逆流が発生しませんでした。
では、なぜ45Yのマスに3cmの段差を設けることで、逆流を防ぐことができるのでしょうか?

まず、管路径100の推奨勾配は2/100‰(パーミル)です。
これは配管1mあたり2cmの高低差があることを意味しています。
今回の流水実験からわかるように、45Yのマスでは約1.5mの逆流が発生しました。
これは勾配に直すと3cm分の高低差が不足していることを示しています。
つまり45Yのマス内にあらかじめ3cm分の高低差を設ければ、逆流を防ぐことができるのです。

排水管のつまり防止のために、トイレ排水には段差付き45度合流(45YS)を設計してください。

段差付き45度合流(45YS)の特色
段差付き45度合流(45YS)の特色
段差付き45度合流(45YS)の特色